共通テストの過去問を参考に入試レベルの演習問題を掲載しています。
解答・解説も含めて、参考になれば幸いです。
問1 次の文章は、経験論と合理論をめぐるライプニッツの思想的立場についての説明である。文章中の[ a ]・[ b ]に入れる語句の組合せとして正しいものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。
経験論も合理論も、人間の認識能力に信頼をおく点では共通するが、知識のもととなる観念の形成をめぐる考え方が異なる。経験論は、心に生まれつきそなわる観念の存在を否定する。例えば、ロックは、観念は感覚的な経験によって心にもたらされると主張し、その際の心のありさまは[ a ]と呼ばれた。ライプニッツは、合理論の立場からロックに論争を挑み、感覚や経験から観念を形作る知性の働き自体は、人間に生まれつきそなわっていると主張した。この主張を裏づける体系的理論を、ライプニッツは[ b ]において展開し、世界を構成する無数の実体と、その全体的調和について論じた。
① a 繊細の精神 b 『省察』
② a 繊細の精神 b 『エチカ』
③ a 繊細の精神 b 『モナドロジー(単子論)』
④ a 白紙(タブラ・ラサ) b 『省察』
⑤ a 白紙(タブラ・ラサ) b 『エチカ』
⑥ a 白紙(タブラ・ラサ) b 『モナドロジー(単子論)』
問2 実体について考察したライプニッツの説明として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 実体とは不滅の原子のことであり、世界は原子の機械的な運動によって成り立っていると考えた。
② 存在するとは知覚されることであるとして、物体の実体性を否定し、知覚する精神だけが実在すると考えた。
③ 世界は分割不可能な無数の精神的実体から成り立っており、それらの間にはあらかじめ調和が成り立っていると考えた。
④ 精神と物体の両方を実体とし、精神の本性は思考であり、物体の本性は延長であると考えた。
問3 次のア~ウは、経験に知識の源泉を求めた思想家の説明であるが、それぞれ誰のことか。その組合せとして正しいものを、下の①~⑧のうちから一つ選べ。
ア 事物が存在するのは、私たちがこれを知覚する限りにおいてであり、心の外に物質的世界などは実在しないと考え、「存在するとは知覚されることである」と述べた。
イ 私たちには生まれつき一定の観念がそなわっているという見方を否定し、心のもとの状態を白紙にたとえつつ、あらゆる観念は経験に基づき後天的に形成されるとした。
ウ 因果関係が必然的に成り立っているとする考え方を疑問視し、原因と結果の結び付きは、むしろ習慣的な連想や想像力に由来する信念にほかならないと主張した。
① ア ヒューム イ ベーコン ウ バークリー
② ア ヒューム イ ベーコン ウ ロック
③ ア ヒューム イ ロック ウ バークリー
④ ア ヒューム イ ロック ウ ベーコン
⑤ ア バークリー イ ベーコン ウ ヒューム
⑥ ア バークリー イ ベーコン ウ ロック
⑦ ア バークリー イ ロック ウ ヒューム
⑧ ア バークリー イ ロック ウ ベーコン
問4 17世紀後半のオランダで、キリスト教やユダヤ教の正統派の立場から異端とみなされたスピノザの思想の説明として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 無限実体である神から区別された有限実体は、思惟を属性とする精神と、空間的な広がりである延長を属性とする物体から成り、精神と物体は互いに独立に実在する。
② 事物の究極的要素は、非物体的で精神的な実体としてのモナド(単子)であり、神はあらかじめ、無数のモナドの間に調和的秩序が存在するように定めている。
③ 神は人間に自己の生き方を自由に選択できる能力を与えたのであり、人間は自由意志によって、動物に堕落することも、神との合一にまで自己を高めることもできる。
④ 自然は無限で唯一の実体である神のあらわれであり、人間の最高の喜びは、神によって必然的に定められたものである事物を、永遠の相のもとに認識することにある。
問5 ヒュームの懐疑論の説明として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 科学の方法は絶対的な真理を保証するものではないのだから、すべての判断を停止することによって心の平静を保つべきである。
② 最も賢い人間とは、自分自身が無知であることを最もよく知っている人間なのだから、自己の知を疑うよう心がけるべきである。
③ 帰納法から導かれる因果関係は、観念の習慣的な連合によって生じたのだから、単なる信念にすぎないことを認識すべきである。
④ 人間はたえず真理を探究する過程にある以上、真理は相対的なものでしかあり得ないので、つねに物事を疑い続けるべきである。
問6 論理を展開する方法の一つに演繹法がある。正しい演繹的な推論として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 雨が降れば、自宅の中庭は必ず濡れる。今日起きたら、自宅の中庭が濡れていた。よって、朝方、雨が降っていたのだろう。
② 今日は雨が降っており、自宅の中庭が濡れている。先週も先月も雨が降ったときはそうだった。よって、雨が降れば、自宅の中庭は濡れるのだ。
③ 雨が降れば、自宅の中庭は必ず濡れる。今日は雨が降っている。よって、今日、自宅の中庭は濡れているはずだ。
④ 雨が降れば、自宅の中庭は必ず濡れる。今日は雨が降っていない。よって、今日、自宅の中庭は乾いているはずだ。
問7 次のア・イは、ベーコンによるイドラについての説明であるが、それぞれ何と呼ばれているか。その組合せとして正しいものを、下の①~④のうちから一つ選べ。
ア 人間相互の交わりおよび社会生活から生じる偏見。例えば、人々の間を飛び交う不確かな噂を、事実であると信じ込むこと。
イ 個人の資質や境遇に囚われることから生じる偏見。例えば、自分が食べ慣れた好物を、誰もが好むに違いないと思い込むこと。
① ア 種族のイドラ イ 劇場のイドラ
② ア 種族のイドラ イ 洞窟のイドラ
③ ア 市場のイドラ イ 劇場のイドラ
④ ア 市場のイドラ イ 洞窟のイドラ
問8 近代自然科学の成立に寄与した思想家としてデカルトがいる。彼についての説明として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 知識の正しい獲得法として、実験や観察に基づいた個々の経験的事実から一般的な法則を導く帰納法を提唱した。
② 自然界に存在する生物の種は不変ではなく、より環境に適した種が自然選択(自然淘汰)によって残ってきたのだとした。
③ 人間の心とは、最初は何も書き込まれていない白紙のようなものであるとして、生得観念の存在を否定した。
④ 精神が対象を疑いの余地なく認識し、他の対象からもはっきりと区別していることを、明証的な真理の基準だとした。
問9 ベーコンの著作と思想についての説明として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
①『プリンキピア』を著し、地上から天体までのあらゆる自然現象の運動を説明し得る根本原理を発見することで、古典力学を確立した。
②『プリンキピア』を著し、理性を正しく確実に用いることによって普遍的な原理から特殊な真理を導き出す演繹法を提唱した。
③『ノヴム・オルガヌム』を著し、事実に基づいた知識を獲得する方法として、経験のなかから一般的法則を見いだす帰納法を重視した。
④『ノヴム・オルガヌム』を著し、懐疑主義の立場から、自己の認識を常に疑う批判精神の重要性と、寛容の精神の大切さを説いた。
問10 デカルトによる真理の探究についての説明として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 精神と物体を区別したうえで、人間精神は物体の運動によって説明され得るとし、人体に関する医学的研究を行った。
② 精神と物体を区別したうえで、物体を精神に基づくものとし、思考する働きをもつ人間精神による認識の分析を、諸学問の基礎とした。
③ 感覚はしばしば私たちを欺くが、数学的な知識は感覚を超えたものであるから、疑わなくてもよいとした。
④ 感覚はしばしば私たちを欺くものであり、私がここにいるという感覚もまた、夢かもしれないため、疑わなければならないとした。